ヒューマンエラーのリスクを減らす
薬の服用に関する事故を防ぐために
誤薬や誤嚥を防ぐためにさまざまな対策を行っていても、残念ながら事故をゼロにはできていないのが現状です。しかし、薬の服用に関する事故は、利用者の命にも関わる重大な問題です。手間をかけてでも、なるべく事故が起きないようにする意識や工夫を忘れてはいけません。
利用者が安全に薬を服用し、生活を維持していくために、介護職員が服薬介助をする際に覚えておきたいポイントを今一度確認してみましょう。
こまめに確認することが大切
まず初めに確認しておかなければならないのは、当然のことではありますが、それぞれの利用者がどんな疾患を持っていてどんな薬が必要なのかということです。これをしっかり確認しておくことによって、誤薬の危険性を減らすことができます。また、併せて薬を服用する方法についても覚えておきましょう。飲み込む力が弱くなっている利用者は普通の水で飲むのは難しいので、とろみをつけた水を用意したり、服薬ゼリーを利用するなどして誤嚥を防ぐことができます。
このような正しい知識を持っていても、人間はミスをしてしまう生き物です。いつも行っているから大丈夫だと過信せずに、服薬介助の度に「〇月〇日、Aさん朝食後」と目で見るだけでなく声に出して確認すると良いでしょう。そして実際に利用者に服用してもらう際には、「〇月〇日、Aさん朝食後の薬を飲んでもらいます」と他の職員に薬を見せてから介助するとなお良いです。自分では気付けなかったミスを防ぐ機会を作ることができるのと同時に、忙しいタイミングでもひと呼吸おいて落ち着いて介助を行うことができます。
薬を服用した後には、必ず口内を確認します。飲み込んだと思っても実は口内に留めていて職員が目を離した隙に吐き出そうとする利用者がいたり、麻痺のため口内に残っていることを利用者自身が自覚できていない場合があるからです。しっかり飲み込んで、口内に何も残っていないことを確認してから次の利用者の介助に移るようにします。
全ての服薬介助が完了したら、薬が入っていた袋と、薬表を照らし合わせながら飲み忘れがないか最終確認を行います。ここまでいくつもの確認が必要ですが、こういった手間をかけることによってミスを減らすことができるのです。
ミスを防ぐ新しい技術
いくつもの確認を行って、細心の注意を払った服薬介助においても人間によるミスはゼロにすることができません。また、上記のような確認を行うためには時間もかかります。職員の少ない介護施設においては特に、少なからず負担になっていることは事実です。
そこで紹介したいのがHSS-10という配薬支援装置です。ロッカー型の装置で、1回分に一包化された薬を約3週間分巻き付けてセットすることができます。利用者名と時間を操作パネルで設定しておくと、その時間にオルゴールが鳴り、光っている該当の利用者名ボタンを押すと必要な薬が出てくるというシステムです。薬が取り出されず飲み忘れている可能性がある場合には利用者名が赤く点灯し、飲み終わった際には該当のボタンを押すと緑の点灯に変わるため職員全員が確認することができます。このようなシステムを使えば誤薬の危険性を減らすだけでなく、それまでかかっていた時間を別のケアに充てることができるとあって、各施設から注目を浴びています。
更新日:2020/02/10
重大な事態につながる服薬ミスを防ぐために
どんなに注意をしていても、人間はミスを完全になくすことができません。しかし薬に関する事故は命に関わるものですから、ミスをゼロに近づける努力や工夫を怠ってはいけません。まずは基本に立ち返り、どんな対策ができるのかについて改めて考えてみましょう。